応挙筆「波涛図」「山水図」の大改修が始まる (2023年8月30日付)

当寺所蔵で東京国立博物館に寄託中の「波涛図(31面)」「山水図(13面)」を今年度から9年がかりで修理することになり、一部は既に京都国立博物館内の文化財保存修理所に運ばれ改修が始まっています。

応挙が寄進後約100年間は、わらぶきの本堂内に誰もがいつでも触れられる状態となっていたことから、経年劣化や破損だけでなく、火災、盗難、台風時の雨漏り、廃仏毀釈など様々なリスクを乗り越え、傷みは多くあったものの奇跡的に全てが残っていました。

明治後期に岡倉天心らの調査で発見され、当時の国宝に指定、傷みのある部分を補修して掛軸に改装、東京国立博物館で約120年間保存管理して頂いてきた作品です。

ところが、火災、盗難、温度、湿度などのリスクが少ない博物館で管理されていても問題は徐々に進行していました。当時の修理は、非常に丁寧に繊細に実施されましたが、元々分厚い襖紙に補修紙を裏打ちして掛軸にしたことから、材質の違う3層の紙と糊が微妙に影響し合って徐々にシワやシミなどが増え、状態が悪化していたのです。

幸い、昨年度から文化庁、東京国立博物館、京都府、亀岡市、文化財保存修理所など多くの専門担当官の皆さんの熱心な調査や助言により、公的補助金、住友財団助成金などを最大限に活用させて頂き大改修が実施できることになりました。

10年後は、応挙生誕300年。「群仙図」を含め改修で蘇った全作品を一堂に展示出来れば素晴らしいことだと思います。

関係者の皆様、そして熱心に取材、報道していただいた方々にも心からお礼を申し上げます。

2023年6月20日付京都新聞社会面
2023年6月20日付京都新聞地域(右側)
2023年6月20日付京都新聞地域(左側)
2023年7月2日付京都新聞1面「梵語」
2023年8月9日付京都新聞コラム「あさぎり」

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