本寺「群仙図」を研究した学術論文が発表されました (2026年5月18日付)

『円山応挙による仙人の作画法について』
─「群仙図」(金剛寺蔵)を対象とした先行作品及び観相学の影響の検討─
と云うテーマで美術史学会の学術論文を発表したのは、鳥取県立美術館学芸員の杉ノ原朋加さん。

杉ノ原さんは、3年程前に大阪大学の修士論文執筆ため金剛寺に来られたのがご縁で、何回も寺を訪問され、特に「群仙図」(以下本作)を研究されてきました。

その成果を学術論文としてまとめ、このほど学会の厳しい審査を乗り越え美術史第200号に掲載、研究者としての登竜門を見事に越えられました。

その内容を私なりに要約してみました。

第1章「先行作品の影響」

応挙が中国の道教の教えに端を発する仙人たちについて何から学んだのか? いわゆる画譜の研究。
応挙は、本作の制作以前に「写生雑録帖」(様々な動植物、家具などを写生したスケッチ帳)の中に、中国で発刊され和訳された『有象列仙全伝』(581人の仙人を挿絵付きで紹介する図像集)を基にしたと思われる記述があり、基礎情報はこの本から学んだと考えられると指摘。
さらに、それ以外の数冊の書物からも仙人の経歴、体形、衣服、背景、持ち物など様々な情報を得ていると考察している。

第2章「仙人の顔貌表現における観相学の影響」

オリジナルの中国美術工芸品に登場する仙人とは違ったリアルで温和な顔貌とした発想はどこから生まれたのか?
それは、応挙は18世紀に社会的に流行していた観相学(顔立ち、骨格、表情などから、その人の性格や気質、才能、生涯の運勢などを読み解こうとする学問)を取り入れている点に着目。
こうした観相学(『相法無尽蔵』などの相書)を自ら学び、本作の中にも反映、「こう云う仙人は、こうした顔立ちであろう」と想像して作画したであろうと考察している。

第3章「応挙の仙人作画法の特質」

応挙は、従来から形の再現と気の表現の重要性を常に説いている。第1章、第2章から本作は、応挙の漢人物画法(中国伝統絵画における人物表現)と共通し、架空の存在である仙人を外見、内面の双方から本物らしい姿に分かりやすく表現することで、人物表現と仙人に対する知識が凝縮された作品であると結論づけている。

《お断わりと感想》

杉ノ原さんが数年にわたり研究された学術論文は、約2万5千字(原稿用紙60枚)以上にわたるもので、浅学の私が要約すること自体に無理があり、誤解や言葉足らずが有るかもしれないことをまずお断りしておきます。

その上で感想としては、

① 本論文から、応挙は一方的な見方、考え方ではなく事前に様々な角度から情報を収集して、十分な準備の基に作画していることが証明されたと思います。

② さらに、応挙は洞察力(実態・本質を見抜く力)が人並はずれ、人間の感性は何を持って生み出されるのか、それをどう表現すれば良いかを常に意識している。つまり、「人の持つ先入観をうまく利用して作画している」と、思いました。

今から約20年ほど前、中国蘇州から来られた方が、いきなり「これらは、八仙ですね。素晴らしい」と言われました。本場中国の人にもインパクトのある作品として映ったのでしょう。

③ 応挙の作品については、まだまだ研究されていない未知の部分があると思います。
杉ノ原さんには、今後ますます研究を深め、佐々木承平先生ご夫妻に並ぶ応挙の研究者として活躍頂きたいと願っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました