「大般若理趣分経」と『御札』
寺院の年末、年始の迎え方は様々だと思いますが、おそらく江戸時代から続いていると考えられる金剛寺の様子をご紹介します。
まず、本堂の上間に歴代住職の頂相(ちんそう・肖像掛け軸)を掛け、餅、蜜柑、茶をお供えし、住職の正装となる金襴の袈裟、紫衣等を飾り大晦日を迎えます。
除夜の鐘を突き始めると住職は、正装に着替え、本尊にお供えした『御札』(おふだ)の前で「大般若理趣分経」(だいはんにゃ りしゅぶんきょう)と云うお経を読み始めます。
このお経は、「大般若波羅蜜多経*」(だいはんにゃ はらみたきょう)の中の第578巻で、特に重要な部分だと云われています。
*全600巻で般若心経の基となるが、膨大で難解なため一般的には転読(経本を繰る)するのみ。
この「理趣分経」の中には、1ケ所 通常の声で無く「降伏一切大魔最勝成就」(ごうぶく いっさい だいま さいしょう じょうじゅ)と腹の底から大声を張り上げる箇所が有ります。「降伏一切大魔最勝成就」とは、「全ての災難や諸悪をとり除き、願いをかなえて欲しい」という意味で、約1時間半かけて読み上げます。
このように、年始に各寺院から檀信徒や参拝者に配られる『御札』は、元旦(三ヶ日)に本尊の前で「理趣分経」を読み、願いを込めた『御札』なのです。
ちなみに、金剛寺の『御札』をご覧いただき、全ての皆様の「降伏一切大魔最勝成就」をお祈りいたします。
コメント