本堂下間の床間と襖には、中国古来の仙人たち「群仙図」(国指定重要文化財12幅)が描かれていました。応挙は、人物の顔貌 ( がんぼう ) を類型的にとらえようと「人物正写図巻」という作品を残していますが、そこに描かれた人物像の典型が、この「群仙図」にも生かされています。
肥痩緩急濃淡(ひそうかんきゅうのうたん)のある描線で描かれた仙人たちは、世俗的な雰囲気を強くただよわせながら、典雅でしかも均整のとれた応挙の人物画の特徴をよくあらわしています。
中国から唐絵として伝わった仙人は、一般的に修行のため痩せこけた厳しい顔立ちで描かれています。応挙が若い頃に描いた仙人も同様にきつい顔立ちでしたが、この作品では、温和な顔立ちに変化しています。老若男女の顔や姿を研究した集大成を13人の仙人たちに託して、後世に残したのでしょうか。
作品には「天明成申晩夏写 應擧」の落款と「應擧之印」が押されています。
仙人は、道教の教えの中で、究極の努力や修行により、超人的な能力を持つ事が出来た人です。古来中国では、八仙(老、若、男、女、貧、富、貴、賤の八人の仙人)として、絵画や京劇など様々な文化・芸術に登場し、日本の神様のような存在として親しまれています。
これは、「どんな人であっても、努力をすれば誰もが公平にその道を究める事が出来る」という夢と希望を与える存在であるからなのでしょう。